トレチノイン酸(オールトランスレチノイン酸)とはビタミンA(レチノール)の誘導体で、生理活性はビタミンAの約50-100倍であり、ビタミンA類の体内での生理活性の本体そのものです。このトレチノイン(レチノイン酸)は、誰でも血液中にごく微量流れているものですから、アレルギー反応を起こすことはありません。
トレチノイン(レチノイン酸)は米国ではしわ・にきびの治療医薬品として、FDAに認可されており、非常に多くの患者さんに皮膚の若返り薬として使用されています。
日本でも自己調剤で使用されてきましたが、刺激が強く外用後に強いかぶれを起こすことが問題でした。しかし、シクロデキストリンという環状オリゴ糖で包接したシクロデキストリン包接トレチノイン(CDトレチノイン)が開発され、従来のかぶれやかさかさを抑制することが可能になりました。
当院ではこのCDトレチノインを含有したトレチノインクリームを自己調剤し、シミやしわの治療を行っています。
トレチノインクリームのシミへの治療
色々なシミに使用できる最大の利点
「ハイドロキノンと併用」
| 治療法 |
トレチノインクリーム |
レーザー治療 |
| 老人性色素斑 |
○ |
○ |
| 炎症後色素沈着 |
○ |
× |
| 肝斑 |
△ |
× |
| ソバカス |
△ |
○ |
トレチノインクリームは点がです。ちなみにトレチノインクリームは原則してもらいます。レーザーは炎症後色素沈着、肝斑には使用できませんが、トレチノインクリームはこれらの治療にも使用できます。そのため、レーザーよりも症例を選びません。そこが最大の利点ですね。
トレチノインクリームの作用機序
「皮ふの表面の細胞(表皮細胞)を早く分裂させて、メラニンを垢にして追い出す」
垢になるスピードを速くしてメラニンを追い出す
難しいことを書くと切りがないので、簡単に書きます。簡単に言えば、ことでシミを薄くしています。シミが生じる簡単な機序です。表皮にメラニンが溜まってシミになります。若いときには表皮は1ヶ月程度で垢になって脱落しますので、メラニンも一緒に排出されます。結果、シミは残りません。加齢が進むと、表皮が垢になるスピードが遅くなります。そのため、垢になりきれないメラニンが表皮内に溜まってシミが生じるようになります。ということは、ことができれば、シミは薄くなるはずです。これがトレチノインクリームの作用機序です。トレチノインクリームを1-3ヶ月外用すると表皮が一巡して垢になって脱落します。さらに、ハイドロキノンを外用することで、メラニンの産生を抑えます。トレチノインクリームでメラニンを追い出し、ハイドロキノンでメラニンの産生を抑える。つまり、作られるメラニンの量を減らしながらメラニンを追い出していけば、結果シミは薄くなるでしょっていう治療ですね。
平成26年3月にトレチノインクリームとハイドロキノンクリームで治療を開始しました。両頬部に茶褐色斑が認められます。7月の写真です。両頬部の色素斑はかなり薄くなっています。特に、左頬部の円形の色素斑はほぼ消失しています。患者さんの了承を得て掲示させて頂きました。別の患者さんです。平成26年8月からトレチノインクリームとハイドロキノンクリームを外用しました。10月の写真です。外用して2ヶ月です。軽度の赤みがありますが、シミは薄くなっています。この段階でトレチノインクリームは終了し、ハイドロキノンクリームのみ継続中です。この程度の赤みは覚悟して頂く必要があります。誰にも同じような効果があるとは限りませんので、その点はご了承ください。
トレチノインクリームの限界
「深いシミには効かない」
垢にならない真皮には効果をもたらすことはできません。
「必ず再発する治療」
ハイドロキノンを塗り続ければ
どんなシミでも薄くなるかというと、もちろん限界があります。簡単に言えば、ということです。理屈は簡単です。トレチノインクリームは表皮の分裂を早くすることで表皮を垢にしてメラニンを追い出します。なので、そのため、真皮まで落ちてしまったメラニンはトレチノインクリームでは追い出すことができません。肝斑に効果が少ないのはこうした理由ですね。また、いずれです。溜まったメラニンを垢にして追い出していますが、メラニンの産生を止めることはできません。そのため、追い出した後もメラニンの産生は続きます。そのため、いずれシミは再発します。そこがレーザー治療と異なる点ですね。、この再発をある程度防ぐことはできると思います。
トレチノインクリームの使い方
- 1日2回連日でシミや小じわに外用します。ハイドロキノンを併用するときは同時に外用します。
- 使い始めてから数日-2週間前後でカサカサや赤みが生じてきます。この期間はシミを漂白している時期ですが、一番辛いときです。その後は皮ふが順応し徐々に反応が軽くなっていきます。程度によって、外用回数を減らしたり、隔日で外用してもらいます。(個人差があります。体質によっては強い赤みが生じることがあり、その時は中止してもらいます。)
- 次の2〜8週間で徐々に炎症が冷めていきます。シミも少しずつ薄くなっていきます。ハイドロキノンの外用を積極的に併用していただく方がよい時期です。
皮ふの赤みはこの時期に完全になくなることが多いですが、体質によっては外用中には赤みが残る方がおられます
- 外用して2週間で再診していただきます。 その後も変化があれば再診していただきます。
- 治療中は必ず遮光してください。日焼けをすると赤みがとれず、そのまま残ることがあります。
- 小じわの治療を希望されるときには、半年以上続ける必要があります。
- 効果が認められた後も、外用剤を継続していただいて結構です。一旦中止して再開しても効きが悪くなることはありません。
- 0.05%トレチノインクリーム
- 0.1%トレチノインクリーム
- 0.2%トレチノインクリーム(常備を開始しました!)
トレチノインクリーム外用前 外用4日目外用したところに赤みが認められます。当院ではCDトレチノインの濃度により、を用意しています。初めて使用される方は、まず0.1%トレチノインクリーム1g(スタート用)から開始して頂き、皮ふの反応を見て5g製剤を購入されることをお勧めします。
トレチノインクリームの料金
| 0.1%トレチノインクリーム 1g(スタート用) |
500 円 |
| 0.05%トレチノインクリーム 5g |
1,650 円 |
| 0.1%トレチノインクリーム 5g |
1,950 円 |
| 0.2%トレチノインクリーム 5g |
2,850 円 |
トレチノインクリームの処方のみの目的で受診されたときは、別途初診料が2,000円あるいは再診料が1,000円必要です。令和元年10月から消費税率の変更に伴い料金を改変しました。
Q&A よくある質問
治療期間は?
通常は1-3ヶ月です。肝斑ではもっと長くなります。小じわの改善のためには半年以上の外用が必要です。
誰でも使えますか?
妊娠中の方、授乳中の方、妊娠予定の方は使用できません。トレチノインクリームの反応が強い方の使用もお勧めできません。
レーザー治療とどちらがよいですか?
早い効果を求めるなら、レーザーの方が適当です。レーザーではシミの原因になるメラニンに直接作用してメラニンの多い皮ふを除去しますので効果は非常に早いです。
ですので、そこまでは考えておられない方にお勧めできる治療です。即効性はありませんが、自宅で可能でありゆっくりとした効果は期待できます。
レーザー治療ができない肝斑(かんぱん)や炎症後の色素沈着に対しても、トレチノインクリームは使用できますので、症例を限ればレーザー治療よりも適当なことがあります。
レーザー治療と併用できますか??
基本的に同時では行いません。ハイドロキノンはレーザー治療に必ず併用していただきますが、トレチノインクリームは赤みが生じるため、レーザーの反応が強くなる可能性があります。レーザー治療が一旦終了した後でトレチノインクリームを開始することは可能です。
ハイドロキノンと併用できますか?
基本的にハイドロキノンと併用していただきます。
トレチノインクリームですでに作られているメラニンの排出を促進し、ハイドロキノンで新たなメラニンの産生を抑制することが治療の柱となります。