現在は、ほとんどの疾患の治療に対して、
診療ガイドラインという
治療の道しるべが策定されています。
アトピー性皮膚炎も例外ではなく、これまでに幾度とガイドラインが発表され、改変されてきました。
現在(2020年時点)、最も新しいガイドラインは
2018年に発表されたものです。
全72ページにわたる超大作です。
リンクを貼りますので、もし気力と体力(?)がある方は読んで頂ければと思います。
これを読んで理解できれば、これ以上の治療バイブルはないと思います。

アトピー性皮膚炎 診療ガイドライン2018
クリックでリンクに飛びます。
もっと簡略化して
皮ふ科専門医の院長でも、このガイドラインを隅から隅まで読んで理解するのは至難の業です。一般の方にそれを求めるのは無理難題ですね。そのため、現在(2020年6月時点)でのアトピー性皮膚炎の治療を簡略的にまとめてみます。民間療法のような有象無象のエビデンスのない治療は含まれません。
アトピー性皮膚炎の治療の要点
アトピー性皮膚炎の診断微妙なときには血液検査が診断の根拠
アレルギーの血液検査のページ
食物
環境因子
以下、アレルギーの血液検査のページから抜粋しました。
| ハウスダスト1 |
ヤケヒョウヒダニ |
スギ |
ヒノキ |
イネ科
マルチ |
| 雑草マルチ |
動物上皮
マルチ |
カビ
マルチ |
(食物マルチ) |
|
周年身近にあるハウスダスト、ダニ。
春花粉のスギ、ヒノキ。
夏花粉のイネ科マルチ。
秋花粉の雑草マルチ。
動物を飼っているあるいは接することの多い患者さんには動物上皮マルチ。
汗をよくかく患者さんにはカビマルチ。
当院では5歳未満の採血はしておりません。
Viewアレルギー39の結果の例
アトピー性皮膚炎の重症度湿疹の程度で直感的にわかります
それぞれの皮疹の重症度
| 重 症: |
高度の腫脹・浮腫・浸潤ないし苔癬化を伴う紅斑、丘疹の多発、高度の鱗屑、痂皮の付着、小水疱、びらん、多数の掻破痕、痒疹結節などを主体とする |
| 中等症: |
中等度までの紅斑、鱗屑、少数の丘疹、掻破痕などを主体とする |
| 軽 症: |
乾燥および軽度の紅斑、鱗屑を主体とする |
| 軽 微: |
炎症症状に乏しく乾燥症状主体 |
デュピクセント
IGAスコア
TARCのページ
よく見るようなアルゴリズムですが、当院なりにアトピー性皮膚炎の治療の要点をまとめました。�@ まずはです。重症のアトピー性皮膚炎は見た瞬間に診断できますが、になることが多いです。アトピー性皮膚炎の血液検査については、をご参照ください。血液検査は、2歳までの乳児では、の検査。3歳以上であれば、の検査が一般的です。3歳以降のアトピー性皮膚炎の検査であれば、環境抗原を中心でよいと思います。これでだいたい何が悪いかはわかると思います。結果は、このようにレポートされます。ちなみに、クラスは「0は陰性」「1は偽陽性」「2-6が陽性」です。2以降が陽性という判断です。ハウスダスト1、ヤケヒョウヒダニにクラス6スギにクラス3、ヒノキ、マラセチア、動物にクラス2典型的なアトピー性皮膚炎パターンですね。食物マルチは5-10歳程度までは追加してもよいと思います。ただし、たくさんの項目で検査を希望されるときには、39項目を調べる検査があります。アトピー性皮膚炎の検査ではここまでの項目は必要ないと思いますが、小児では食物にも陽性を示すことが多いです。(皮疹の原因になっているかは別として)�A 次にの評価です。これはが、ガイドライン上は以下のように決められています。 (アトピー性皮膚炎のガイドラインより引用) 実際これを読んでも一般の患者さんには意味不明ですね。実際、皮ふ科医も正確に判断してるわけではありません。しかし、を投与するときには、重症度を数値化して診断する必要があります。これらが、やEASIスコアです。ガイドラインの「2.9 重症度評価法」に詳しく書いてありますが、一般に患者さんが使用することはないスケールと思います。また、血液検査で重症度を判定することもできます。
アトピー性皮膚炎の重症度の血液検査については、をご参照ください。
アトピー性皮膚炎の治療の目標
院長の主観が中心
「アトピー性皮膚炎は完治する病気ではない」
「アレルギーの体質を消し去る」
重要なことは治療を継続すること
継続なしに改善することはありません。
皮膚をよい状態を維持する
「皮膚をよい状態に保つこと」
ここからはです。必ずしも一般論ではないことを了承ください。アトピー性皮膚炎の治療で一番重要なことは、ということです。残酷な言い方にはなりますが、アトピー性皮膚炎を完治させると言うことは、言い換えればことに他なりません。現在、減感作療法など、試みつつある治療はたくさんありますし、スギ花粉症にはシダトレンなど実際に治療が開始されています。しかし、現時点ではアトピー性皮膚炎にはあまり効果を発揮できていません。完治する病気ではない以上、です。どの治療を選択するにしろ、完治することがなくても、治療を継続することにより、ことは可能です。アトピー性皮膚炎の治療の目標は、と考えてもらうとよいと思います。※ 乳児のアトピー性皮膚炎については、完治することがあると言われています。 また、小児のアトピー性皮膚炎の多くは思春期に改善することが多く、成人以降は治療が必要ない状態になることもあります。しかし、そのためには思春期までしっかり皮疹をコントロールすることが重要です。
実際の治療について
- ステロイド外用剤 外用
- 抗ヒスタミン剤 内服
- 免疫抑制剤 外用 (プロトピック軟膏)
- JAK阻害剤 外用 (コレクチム軟膏)
- PDE4阻害剤 外用 (モイゼルト軟膏) New!
- 免疫抑制剤 内服 (ネオーラル)
- 生物製剤 注射(デュピクセント、ミチーガ、アドトラーザ、イブグリース) New!
- JAK阻害剤 内服(オルミエント、リンヴォック、サイバインコ) New!
- ナローバンドUVB、エキシマランプ (紫外線療法)
ざっと、列挙します。 保険で認められている治療は概ね以上です。ヒルドイドシリーズや白色ワセリン、プロペトなどの保湿剤は、治療薬と言うよりもスキンケアに分類する方が適切と思います。
ステロイド外用剤、抗ヒスタミン剤
王道
皮膚の炎症を抑える
かゆみを抑える
掻いて悪化する力よりも外用して皮膚がよくなる力の方が上になければなりません。
ステロイド外用剤抗ヒスタミン剤治療が継続95%以上のアトピー性皮膚炎はコントロールできる
アトピー性皮膚炎の治療のがこの2つです。ステロイド外用剤の効果は、ことです。抗ヒスタミン剤の効果は、ことです。アトピー性皮膚炎に係わらず、皮膚の炎症が治るためには、図にすれば下のような感じですね。単純な話ですので、誰でもわかることですが、なかなか実践はできません。適切にとを併用してできれば、おそらくと思います。ステロイド外用剤、抗ヒスタミン剤については、色々なメディアで説明されていますので、あえて詳細は省きます。
プロトピック軟膏
副作用がある
�@ 皮膚が薄くなる
�A 皮脂が増えてくる
�B 毛細血管が増えてくる
�C 体毛が濃くなる
副作用のない外用剤

免疫抑制効果のあるタクロリムス
ステロイドのような副作用はありません
長期間使用しても大丈夫
欠点
�@ ステロイドほどの抗炎症作用がありません。
�A ゆっくりとした効果発現です。
�B 使い始めに刺激感を感じることが多いです。
パンフレット
このように、ステロイド外用と抗アレルギー剤内服でほとんどのアトピー性皮膚炎はコントロールできると思います。ただし、問題がひとつあります。ステロイド外用を長期間使用すると、ということです。例えば、などなどの副作用が生じてきます。そのため、ステロイド外用に変わるが求められました。そのために開発された外用剤がプロトピック軟膏です。外用剤の歴史は長く、1999年に販売が開始されていますので、すでに20年以上になります。プロトピック軟膏です。0.1%と0.03%の2剤があります。
16歳以上は0.1%を使用します。 15歳以下では0.03%の適応です。適応症は、アトピー性皮膚炎です。プロトピック軟膏はが主成分です。ステロイドとは違った機序で炎症を抑制しますので、。つまり、とも言えます。ただし、プロトピック軟膏なりのもあります。 簡単に言うと、ステロイドほど効果がありません。 なので、顔面、首、肘窩、膝窩など皮ふの薄いところには効果が期待できますが、 体、手足など皮ふが厚いところにはステロイドほどの効果は期待できません。 ステロイドほど即効性はありません。ドロッとした効き方ですね。 これは欠点とも、利点とも言えますが、 プロトピック軟膏が皮ふから吸収された後に神経からかゆみ物質が大量にでると言われています。 このかゆみ物質が刺激感(ヒリヒリ、チクチク)の原因になっています。 ただし、使い続けることでかゆみ物質が枯渇すると、アトピー性皮膚炎のかゆみも改善します。 つまり、刺激感を我慢して使用し続けると、かゆみ自体が収まってくるという利点もあります。プロトピック軟膏について、詳細は販売元のマルホさんのをご参照ください。
コレクチム軟膏
2020年6月新しい外用剤

3割負担の方で1本が210円くらい
16歳以上のアトピー性皮膚炎2歳以上の小児
「外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤」
JAKと呼ばれるタンパク質をブロック
プロトピック軟膏と同じような位置づけ
最近のアトピー性皮膚炎治療のトピックスは、なんと言ってもコレクチム軟膏です。に発売されたです。 1本5gです。薬価は700円くらいですので、になります。のみの適応でしたが、2021年4月からにも外用できるようになりました。正式にはと呼ばれる外用剤です。詳しい作用機序は割愛しますが、アトピー性皮膚炎の発症、増悪などに関与している
IL-4、IL-13、IL-31などを介した情報伝達を阻害することで、炎症メカニズムを途中でブロックすると言われています。下にシェーマを作りました。デュピクセントのシェーマを引用改変しています。つまり、デュピクセントの作用機序と似ているということですね。自作ですので、正確性はやや微妙ですが、それなりに理屈は合っていると思います。することで、抗原の情報の伝達が生じにくくなり、結果としてアトピー性皮膚炎の炎症の原因となるIL-4などのサイトカインが減少するという機序ですね。ステロイドやプロトピック軟膏と異なり、免疫を広く下げるわけではないので、安全な薬剤と言えると思います。ですが、刺激感がないので使いやすい外用剤です。また、ステロイド外用があまり奏効しないときにコレクチム軟膏が驚くほど奏効することがあります。一度、使用してみてもよい外用剤と思います。
モイゼルト軟膏 
外用PDE4阻害剤


2歳以上の小児から使用できます。生後3ヶ月の乳児から使用できるようになりました!
ステロイド外用剤のような副作用は生じません。
3割負担の方で450円/1本
国内初のとして2022年6/1から発売された薬剤です。PDE4阻害剤とは、炎症性サイトカインなどの化学伝達物質の産生を抑制し、抗炎症作用を発揮することでアトピー性皮膚炎の症状を改善すると考えられています。
モイゼルト軟膏 1%です。モイゼルト軟膏 0.3%です。難しい作用機序は下に示すとおりです。PDE4と呼ばれる酵素は、cAMPという物質をAMPに分解する役割があります。
アトピー性皮膚炎の細胞内ではcAMPの濃度が低下していることがわかっています。cAMPの量が減ると体の中で炎症を引き起こすサイトカインが過剰につくられるため炎症が悪化します。モイゼルト軟膏はPDE4を阻害するので、cAMPの分解を抑えることで濃度が低下しなくなり、炎症をおさえることができます。
→効果は、、、ステロイド外用ほどではないと思います。コレクチム軟膏と同等くらいでしょうか。プロトピック軟膏0.1%のような刺激感は少ないとされています。薬価はモイゼルト軟膏1% 152.1円/gですので、1本10gで1502円、くらいです。
免疫抑制剤内服(シクロスポリン、薬剤名:ネオーラル)
重症のアトピー性皮膚炎の治療
痒疹型
保険に認められた正当な治療
シクロスポリン
「ネオーラル」
血圧上昇はほとんどの症例で認められます
定期的に血液検査血中濃度をモニター
1日量3mg/kgを1日2回に分けて経口投与
できる限り短期間
相対禁止小児には処方できません
ここからは、かなりについてです。アトピー性皮膚炎の一般的な治療は、これまでに記載したような、�@ステロイド外用剤、�A抗アレルギー剤内服、�Bプロトピック軟膏、�Cコレクチム軟膏です。治療を継続することが前提ですが、ほとんどのアトピー性皮膚炎はこれらの治療でコントロールできると思います。しかし、中にはこれらの治療でもまったくコントロールできない重症の症例があります。特に、と呼ばれるような、掻破した部位がいぼ状に隆起して全身に多発するようなタイプのアトピー性皮膚炎は非常に治療に難渋します。このような痒疹が全身に多発するようなアトピー性皮膚炎には通常の治療が効きにくいです。重症のアトピー性皮膚炎に対し、免疫抑制剤の内服が可能です。の1つです。という成分の薬剤です。薬品名は先発品はといいます。ジェネリックが多数ありますので、別の薬品名で処方されることも多いと思います。ネオーラルです。10mg、25mg、50mgの3つの剤型があります。ネオーラル50mgの薬価が312.3円(2020年9月現在)ですので、3割負担の方で100円くらいです。仮に1日150mg内服したとすると、1ヶ月では300円×30日で9000円くらいになります。現在は多数のジェネリックがありますので、それよりはかなり安い負担にはなると思います。シクロスポリンは、もともとは移植の拒絶反応を押さえる目的で開発された薬剤です。少量内服することで、強い副作用を伴わず皮膚の炎症に大きな効果が期待できることから、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬などの難治性皮ふ疾患に適応となりました。しかし、こういった性質の薬剤ですので、どうしても副作用があります。特に、。そのため、降圧剤を併用しながら服用しなければならないこともしばしばです。もともと高血圧がある方は特に注意が必要です。腎機能障害も用量依存性に生じます。そのため、を行い、薬剤のしながら服用する必要があります。内服量は、「シクロスポリンとしてする」とされています。つまり、体重60kgの方であれば、60kg×3mg=180mgから開始になります。ただし、経験的にはアトピー性皮膚炎には
2mg/kg程度でも効果がありますので、少なめから開始することが多いと思います。経過により、1-1.5mg/kg程度まで減量を目指します。なお、「投与期間はにとどめ、1回の治療期間は12週間以内を目安とする」とされています。しかし、現実的にアトピー性皮膚炎の治療が12週間で終了することは想定できません。副作用がない限りは継続することになります。0歳〜14歳のアトピー性皮膚炎にはになっていますので、基本的に。
2018年以降承認されたアトピー性皮膚炎の注射薬です。画期的な薬剤で、効果も絶大です。そのかわり、医療費もとても高いです。デュピクセントがもっとも有名ですが、他の薬剤にも独自の特徴があります。当院のホームページで詳しく説明しておりますので、を参照ください。当院では延べ30人以上の投与経験がありますが、大変有効な治療です。副作用はほとんどありませんので、経済的に余裕のある方は検討されてもよいかと思います。2022年以降、新たな生物製剤が次々発売されています。ミチーガアドトラーザイブグリースミチーガ、アドトラーザ、イブグリースについては別にページを作製していますので、を参照ください。
2020年12月から相次いでアトピー性皮膚炎に適応のある内服薬が世に出ました。いずれもヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤と呼ばれる飲み薬です。 オルミエント リンヴォック サイバインコいずれの薬剤も極めて有効ですが、投与するには色々とハードルがあります。しかも、かなり高額です。基本的な治療内容は全て同じです。ですので、詳細はをご参照ください。
アトピー性皮膚炎に保険適応のある治療法です。当院には全身型のナローバンドUVBと局所型のエキシマランプがありますので、これらを用いて加療します。全身型のナローバンドUVBです。 局所用のエキシマランプです。紫外線を照射することでそう痒が軽減することが期待できます。個人差はありますが、アトピー性皮膚炎のそう痒にはとても有効な治療と思います。副作用もほとんどありません。1つの問題点は、最低でもということです。定期的に通院できる患者さんにしか効果を期待できません。その意味では、学生やサラリーマンには少し選択しにくい治療と思います。おのおの詳述したページがありますので、ご参照ください。