おもに、
体のニキビの治療を目的として発売されたとのことです。
よい機会なので、体のニキビの治療について記載します。
体のニキビの特徴について
ニキビというと「おでこ」「ほほ」「あご」といった顔面の皮疹が頭に浮かびますが、もちろん体にも生じます。
特に多いのは、
「背中」「胸」ですね。
特徴としては、
赤いニキビ〜膿んだニキビのような
炎症を伴うニキビがほとんどです。
顔面のように
白にきび(面疱)が生じる方は少ないと思います。
また、しばしば
「かゆみ」を伴う方が多いです。
つまり、
ニキビと湿疹が混在していることが多いです。
そのため、治療は炎症性ざ瘡の治療が中心になります。
かゆみがある方には、ニキビと薬と湿疹の薬を混ぜて処方することもあります。
体のニキビの治療について
これまでは体のニキビの治療は大きく分けて2通りでした。
- 炎症を伴うニキビの治療のみ行う場合
- 基本は抗生剤の外用剤で治療します。クリームやゲルは広範囲に伸ばすことが難しいので、ローションの外用剤を処方します。
- 皮疹が高度な方では、抗生剤や漢方薬の内服を併用します。
- 白にきび(面疱)の治療も行う場合
- 体のニキビでは面疱が目立つことはまれですが、思春期に限れば面疱が多い方もおられます。
- これまでは、ベピオゲルやベピオローションを使用していました。
- ちなみに、ディフェリンゲルやエピデュオゲルは顔面のみの適応です。体には外用できません。
- そう痒が強い場合
- ステロイド外用剤も併用します。
- 例えば、ボアラクリーム50g+アクアチムクリーム50g混合とかの処方が多いです。
実際の薬剤です。

抗生剤のローションです。左が
アクアチムローション、右が
ダラシンTローション。
もっとも一般的な体のニキビの治療薬です。

面疱の治療も希望されたときには、
ベピオゲル、
ベピオローションを処方します。
ベピオウオッシュゲルについて
ニキビの治療薬として新たに登場した外用剤です。
といっても、成分は上の写真の
ベピオゲル、
ベピオローションと同じです。
ユニークなのは、その使用方法です。
一番の特徴は、
「外用してから5〜10分後に洗い流す」ことです。
なので、
「WASH(洗う)」というネーミングなんですね。
これには理由があります。
- ベピオゲル、ベピオローションには使い始めにそれなりのかぶれを起こします。外用剤の塗布時間を短くすることでこのかぶれを最小限にする目的です。
- ベピオゲル、ベピオローションには脱色作用があり、体に外用して服を着て寝るとその服が脱色されることがあります。そのため、外用したまま寝るときには、脱色されてもよい服を着てもらう必要がありました。洗い流すことで、この手間を除くことができます。
すぐ洗い流して効果があるの?
誰もが思う疑問ですが、「すぐに洗い流して効果があるの?」ってことだと思います。
それには、色々スタディがされており、十分効果が発揮できることが検証されています。

あまり差がないようにも見えますが、有意差はあるとのことです。
ベピオウオッシュゲルの外用量
実際のベピオウオッシュゲルの外用量です。
だいたい1円玉大(直径2cm)で両手のひらに相当する面積に外用できます。
では、実際に外用するときにはどのくらいの範囲に相当するかですが、
顔面では手のひら2枚分の面積でOKです。すなわち1円玉大の量です。
背中は、体格によって多少差がありますが、それでも手のひらで6枚分の面積で十分と思います。
すなわち、1円玉大を3個の量ですね。
毎日この量で使用したとすると、だいたい下の図のような感じです。
ベピオウオッシュゲル1本で、
顔面では40回分=40日分です。
背中全体では13回分=約2週間分ですね。
ベピオウオッシュゲルの費用
|
薬価 |
3割負担の方 |
ベピオウオッシュゲル 1本 (20g) |
1,992 円 |
598 円 |
顔面用には2本まで、体(背中、胸)用には4本まで処方できます。 |
マラセチア毛包炎について
最後に、体のニキビと鑑別が必要な疾患について記載します。
思春期から青年期で
よく汗をかく方には
マラセチア毛包炎という疾患がみられます。
これは、一見ニキビに見えますが、マラセチアという
カビで生じる真菌症です。
にきびの治療は全く効きません。
2025年にYahoo!JAPANのトピックスにも掲載されたため少し認知度が上がった疾患です。
特徴は、
ニキビに比べると、
首や腕にも生じることが多い。代わりに
背中の下の方には生じにくい。
ひとつひとつの皮疹がやや
大きく、少し硬い。
そんなところでしょうか。
それでも、皮膚科歴30年超の院長にも診ただけでは完全に鑑別できません。
そのため、治療の効果で診断する必要があります。(しっかり調べようと思えば、皮膚を切り取って真菌培養検査をすれば可能ではありますが。)
頻度は圧倒的にニキビの方が高いので、まずはニキビの治療をしてから効果がなければマラセチア毛包炎の治療をすることが一般的ですね。